日本毛髪科学協会の認定講師で毛髪診断士の けんぞう です。
今日もご覧になっていただきありありがとうございます。
今日も科学的根拠に基づいた育毛関連の情報をお届けしたいと思います。
目次
はじめに
新薬「ザガーロ」は本当に凄いのか
これは、週刊ポストの特集のタイトルです。
9月に男性型脱毛症治療薬としてザガーロが承認されました。
男性型脱毛症といえばプロペシアですが、
気になるのは、ザガーロとプロペシアの有効性の違いです。
新薬「ザガーロ」は本当に凄いのか
これは、2015年11月2日に発売された、「週刊ポスト」11/3号の記事のタイトルです。
新薬・ザガーロとは、9月に、男性型脱毛症として承認されたグラクソスミスクライン社の医療用医薬品です。
詳しくいえば、新薬ではなく、既に前立腺肥大症を適応に発売されているアボルブが、男性型脱毛症としての適応が承認されたもので、適応拡大承認というのが正しい言い方です。
詳しく見る ⇒ アボルブがAGAで承認され商品名はザガーロ
グラクソスミスクラインはイギリスに本社を置く世界第6位の製薬会社です。
なお、ザガーロもアボルブも商品名でデュタステリドという化学物質が有効成分です。
詳しく見る ⇒ グラクソスミスクライン・プレスリリース
AGAといえばプロペシア
男性型脱毛症の治療薬といえばプロペシアです。
プロペシアはアメリカのメルク社の男性型脱毛症の治療薬で、1977年に米国で発売され、世界中で発売され、国内ではメルク社の日本代理店だった万有製薬(現;MSD)が2005年12月に発売し、「飲む育毛剤」として有名になったのです。
プロペシアも商品名でフィナステリドという化学物質が主成分です。
そして、ファイザー社がプロペシアのジャネリック薬の承認を受けて発売を開始しました。
詳しく見る ⇒ ファイザーがプロペシアのジェネリックを発売開始
というわけで、国内の男性型脱毛症の治療薬は群雄割拠の時代に突入したのです。
- 2005年12月 万有製薬がプロペシアを発売
- 2015年4月 ファイザーがプロペシアのジェネリックを発売
- 2015年9月 グラクソスミスクラインのザガーロが承認(11月15日現在、未発売)
そして負けじと、男性型脱毛症を適応とする一般医薬品であるリアップを発売する大正製薬もつい先日、リアップの新製品を発売しました。
詳しく見る ⇒ 大正製薬がリアップの新製品を発売
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ザガーロとプロペシアの有効性に差はあるのか
まず、知っておいていただきたいのは、ザガーロもプロペシアも前立腺肥大症の治療薬だということです。
ザガーロの前立腺肥大症での商品名はアボルブですが、2001年11月に米国で、2002年7月に欧州で承認され、国内でも2009年に発売されています。
メルクのプロペシアも1992年に米国で前立腺肥大の治療薬としてプロスカーの商品名で発売されたのですが、
その後、男性型脱毛症に有効であることが明らかになり、1997年12月22日に米国で男性型脱毛症治療薬として承認され、現在では世界70ヵ国以上で発売されています。
ザガーロもプロペシアも5α-リダクターゼ抑制作用
ザガーロもプロペシアも5α-リダクターゼという酵素を抑制する作用があります。
男性ホルモンであるテストステロンは、5α-リダクターゼという酵素によって、ディハイドロテストステロン(DHT)という活性の強いホルモンに変わるのですが、
DHTは、
- 前立腺を肥大させる
- 発毛を抑制する
ということから、5α-リダクターゼ抑制作用を有するザガーロもプロペシアも前立腺肥大症、男性型脱毛症の治療薬として使われているのです。
なお、育毛剤でも5α-リダクターゼ抑制作用を有するものがあります。
植物製品を主体とした安全性の高い育毛剤で、ザガーロもプロペシアと同じ効果が期待出来ます。
詳しく見る ⇒ フィンジアの有効性には科学的根拠がある
ザガーロとプロペシアの作用は多少異なる
ザガーロもプロペシアも、5α-リダクターゼ抑制作用を持つ薬品ですが、全く同じかといえば多少異なるのです。
5α-リダクターゼという酵素には、1型と2型の2種類があるのです。
- プロペシア : 2型の5α-リダクターゼを抑制
- ザガーロ : 1型と2型の5α-リダクターゼを抑制
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ザガーロとプロペシアの効果に差があるのか
男性型脱毛症には、1型5α-リダクターゼがより多く関わっているとも言われています。
週刊ポストの記事の中で、
頭髪治療の東京メモリアルクリニック・平野の佐藤明男院長は、
すでに韓国では処方されています。
日本で発売されたら当院ではすぐに入手、処方するつもりです。
従来品を使用していてもなかなか効果が表われない患者さんの中には、すでにザガーロを予約している人もいるほどです。ザガーロとプロペシアの大きな違いは、抜け毛の原因とされる物質を阻害する成分量がザガーロの方が多いこと。
プロペシア1mgの効果をザガーロは0.1mgで期待できる。
プロペシアは0.2mgと1mgの2種類が販売されていますが、ザガーロは0.1mgと0.5mgの2種類が販売されます。
と述べています。
さらに、池袋ユナイテッドクリニックの細田淳英院長は、
米国皮膚科学会の医学雑誌にザガーロの臨床試験データが公開されているが、ザガーロ0.5mgはプロペシア1mgに比べて1.6倍の発毛効果がありました。
という。
東京メモリアルクリニック・平野の佐藤院長も、
AGAは軽症、中等症、重症の3つに分類されます。
治験論文を読み解くと、プロペシアは軽症から中等症の方には効果がありますが、重症の方にはなかなか効果は認められません。
これに対してザガーロは、症状が進行した方に効果がありそうな結果が出ている。
薬効が高い分だけ中等症や重症の方々にも効果がある可能性があります。
従来品では改善傾向の見られない人にとって、ザガーロは朗報だといえます。
と補足しています。
ザガーロの臨床成績
池袋のユナイテッドクリニックの細田院長の述べる医学雑誌とは、
A randomized, active- and placebo-controlled study of the efficacy and safety of different doses of dutasteride versus placebo and finasteride in the treatment of male subjects with androgenetic alopecia.
詳しく読む ⇒ J Am Acad Dermatol
という論文で、ザガーロの国際共同臨床試験成績です。
この試験は2004~2006年頃に韓国を中心として実施され、下記に述べるように韓国での申請に使われ、また、今回の国内での申請のも使われた試験成績です。
簡単に概要をお知らせしましょう。
- 試験 : 多施設国際共同・無作為化・二重盲検・ダブルダミー・実薬/プラセボ対照・並行群間比較試験
- 対象 : 20~50歳の男性型脱毛症患者、917例
- 投与 : ザガーロ0.02mg、0.1mg、0.5mg、プロペシア1mg、またはプラセボを1日1回、24週間経口投与
- 検査項目 : 発毛(毛髪数のベースラインからの変化量)
試験名はややこしいのですが、医者にも患者にも、ザガーロ、プロペシア、偽薬のいずれであるかを知らせないで投与し、
- ザガーロの優越性を検証
- ザガーロのフィナステリドに対する非劣性および優越性
を検証する試験です。
ザガーロの発毛効果
投与24週後に、毛髪数(頭頂部の直径2.54cm円内における直径30μm以上の非軟毛の数)が試験開始時より、ザガーロ0.1mg群で63.0本、0.5mg群で89.6本、プロペシア1mg群で56.5本増加したそうです。
ザガーロの育毛効果
投与開始24週目において、プラセボ群と比較して毛髪の太さ(頭頂部の直径2.54cm円内における直径30μm以上の非軟毛の太さの合計)が有意に増加したそうです。
ザガーロの発売は日本と韓国だけ
プロペシアは世界70国以上で発売されています。
グラクソスミスクラインも前立腺肥大症治療薬として発売した後に男性型脱毛症の治療薬としての開発を進めましたが、2005年に第2/3相の段階で開発を中止しました。
中止の理由は明らかにされていませんが、「先行品のプロペシアと市場が競合するため商業的に成功することは困難だと判断した」と見られています。
詳しく見る ⇒ アボルブの発毛効果はプロペシアより優れるのか
その後、2005年に、韓国を中心とした国際共同試験を再開し、2009年に韓国で発売し、そして、2015年の今年、日本でも承認されたのです。
しかし、、
ザガーロがそれほど優れるのならなぜ世界中で発売しないのか、、
プロペシアは世界70ヵ国以上で発売されているのに、、、
というのが、私の素直な疑問なのですが、
ザーガーロかプロペシアか、自分で信じたものを使ってみるべきでしょう。
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