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薄毛治療の新薬が発売か?

興味深い論文を見つけました。

 10日で治る薄毛治療の新薬が見つかった

というのです。

そのタイトルも、

科学者は薄毛を治療してきたのでしょうか?新薬はマウスの毛を10日で再生しました

と挑戦的です。

まだ動物試験段階でマウスでの効果しか確認されていないのですが、

薄毛治療の画期的新薬となるのでしょうか?

その薬とは、関節リウマチ治療薬として発売され、

国内でもファイザー社が発売しているのです。

脱毛症治療薬としての転用は可能なのでしょうか?

 

 

10日で治る薄毛治療の新薬とは

2015年10月23日、イギリスの Mail Onlineは、Science Advancesという科学雑誌に、

「10日間で薄毛が治る」という論文が掲載された

と報じました。

 

Mail Online は、イギリスの大衆新聞サイトで、月間ビジター数でNYタイムズを追い抜き、1日のユニークブラウザー数は820万人、月間ユニークブラウザー数は1億2900万と世界で最も人気の高い新聞サイトで、ガセ記事を掲載するようなサイトではありません。

 

前置きが長くなりましたが、その論文とは、

詳しく見る ⇒ 原文を読む

 

『科学者は薄毛を治療してきたのでしょうか?新薬はマウスの毛を10日で再生しました』

というタイトルで、

  • 毛包の中の毛の成長を妨げている酵素に作用する
  • 静止状態にあった毛包を活性化させる
  • 5日の投与によりマウスの毛が10日で成長した

というのです。

 

具体的写真も掲載されています。

 

マウスの背中の毛を剃って、ruxolitinib または tofacitinib という薬を背中の右側だけに塗布したところ、

3週間後には写真のように毛が生えそろったというのです。

 

この薬は、毛を作り出す毛根部の毛包に作用して、毛の成長を阻害している酵素に直接作用することによって毛の成長を促進するのだそうです。

 

 

多くの薄毛のヒトでは、毛包内にある毛母細胞の活性が様々な原因で低下しており、毛の成長が悪くなり、毛が細くなったり、毛が伸びなくなってしまうのです。

ほとんど毛がなくなったハゲのヒトでもよく見るとうぶ毛のような細い毛が生えており、毛包の毛母細胞を活性化すれば再び太い黒い毛が生えてくるのです。

 

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薄毛治療の新薬の作用機序は

現在の薄毛治療の治療薬といえば、

  • 医療用医薬品 : プロペシア (フィナステリド)
  • 一般医薬品 :  リアップ (ミノキシジル)

でしたが、新しい治療薬も出ましたね。

 

グラクソスミスクラインの医療用医薬品であるザガーロです。

 詳しく見る ⇒ ザガーロの発売時期と価格

 

さて、

プロペシア、ザガーロ、リアップの作用機序と、今回の論文のruxolitinib と tofacitinibは全く異なる作用を持っているようです。

  • プロペシア : 5α-リダクターゼ抑制作用
  • ザガーロ : 5α-リダクターゼ抑制作用
  • リアップ : 血管拡張作用

 

薄毛治療の新薬の作用機序は

今回発表された10日間で薄毛が治るという夢のような新薬は、ruxolitinib と tofacitinib という化学物質です。

 

この化学物質の作用は、

HOW IT WORKS
Hair follicles do not produce hair steadily, but cycle between dormant and active phases.
JAK inhibitors trigger the follicles’ normal reawakening process, the researchers found.
Mice treated for five days with one of two JAK inhibitors sprouted new hair within 10 days, greatly accelerating the onset of hair growth.
No hair grew on control mice within the same amount of time.

と紹介されています。

 

JAK inhibitorという言葉が目につきます。

 

そうです、ruxolitinib と tofacitinib という化学物質は、JAKという酵素を阻害することによって、毛包の育毛活性を活性化させるのです。

JAKはjanus kinaseの略で、日本語ではヤヌス・キナーゼいわれる酵素です。

ヤヌスとはローマ神話に出てくる、前後二つの顔をもつ門番のことなのですが、JAKは結合している受容体のリン酸化と下流の分子のリン酸化の二つの役割を持っていることからこの名前がつけられたのですが、受容体がリン酸化されることによって種々の情報伝達物質が伝達されるのです。

Angela Christiano of Columbia University Medical Centerの実験で、ruxolitinib と tofacitinib は、休止状態にある毛包の再活性化させることが明らかになったということです。

 

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薄毛治療の新薬は日本でも既に発売済?

Dr.Christianoや彼の共同研究者は、ruxolitinib と tofacitinibの発毛作用についてはruxolitinib と tofacitinibを用いた研究の過程において偶然に発見したというのですが、ruxolitinib と tofacitinibはアメリカの、日本の厚生労働省に相当するFDAという機関によって承認されていると述べていますが、

ruxolitinib と tofacitinibは日本でも発売されているのです。

 

ruxolitinib は血液癌の治療薬として発売

ruxolitinib (ルキソリチニブ)は、2014年9月2日に、ノバルティスファーマから、ジャカビという商品名で発売されました。

 

 tofacitinibは関節リウマチの治療薬として発売

 tofacitinib(トファシチニブ)はファイザー社が開発した関節リウマチ治療薬ですが、2013年5月にゼルヤンツという商品名で武田薬品から発売されました。

ゼルヤンツは、関節リウマチにおいて炎症に重要な役割を果たす細胞内のシグナル伝達経路であるJAKを阻害して炎症を緩和するのです。

 

ruxolitinib と tofacitinib は薄毛治療薬として発売可能か

「10日間で薄毛が治る」という論文の著者であるDr.Christianoは、

ruxolitinib と tofacitinibはマウスだけでなく人間の毛包でも有効であった

と述べています。

さらに、

JAKの最適化を行えば薄毛治療にもっと適したJAK化合物があるだろうと示唆しています。

薄毛治療の医療用医薬品や一般用医薬品も元々は他の疾患の治療薬でした。

 

さて、プロペシア、ザガーロ、リアップの作用機序と、今回の論文のruxolitinib と tofacitinibは全く異なる作用を持っているようです。

  • プロペシア : 前立腺肥大症治療薬
  • ザガーロ : 前立腺肥大症治療薬
  • リアップ : 高血圧治療薬

ですから、ruxolitinib と tofacitinibが癌や関節リウマチの治療薬であっても薄毛を対象とした臨床試験を行い薄毛治療薬としての適応拡大が承認されれば薄毛治療薬として発売することは十分に可能なのです。

 

さらに、ruxolitinib と tofacitinibは経口投与役ですが、マウスの実験では外用薬ですから、安全性に関する試験も簡単に行えるはずで、ゼロからの開発を行うことに比べれば非常に短期間で開発することが可能でしょう。

特にファイザー社は男性のQOLに影響する、

  • 勃起不全(ED)治療薬
  • 薄毛治療薬

に注力していくと今後の方針を明確にしており、

 詳しく見る ⇒ ファイザーは男性のQOL向上に寄与する方針

 

その第一弾として、ファイザーは「プロペシアのジェネリックを発売」していますから、

ファイザーのtofacitinibの薄毛治療薬への早期取り組みに期待したいものです。

 

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