日本毛髪科学協会の認定講師で毛髪診断士の けんぞう です。
今日もご覧になっていただきありありがとうございます。
今日も科学的根拠に基づいた育毛関連の情報をお届けしたいと思います。
はじめに
iPS細胞による網膜の再生医療のニュースが流れていますが、
髪の毛の再生医療はどうなっているのか?
資生堂は髪の毛の再生医療に着手し、
2018年の実用化に向けて研究中と公表していますがその進捗はどうなっているのでしょう?
そして、
国内でもっとも進んでいると言われている理化学研究所の髪の毛の再生医療の現状はどうなのでしょうか?
髪の毛の再生医療が実現化すると、薄毛もフサフサによみがえるのでしょうか?
あなたも気になる髪の毛の再生医療の現状について調べてみました。
髪の毛の再生医療に期待
再生医療は人体の組織と機能を組織の再建や細胞治療によって回復させる治療法で、主に病気や怪我、生まれつきの障害などで失った機能を再生することができる。
将来的には、心臓疾患や、腎不全などの臓器の機能不全の回復が期待されるだけでなく、糖尿病などの現時点では治療法が存在しない疾病の根本治療も夢ではないのです。
脱毛症も疾病ではないものの、ヒトとしての外観に大きな影響を及ぼし、精神的な苦痛を与えることから、再生医療の導入が望まれる分野です。
現時点でも育毛技術も、男性ホルモン(DHT)を抑制する経口治療薬、血管拡張作用のある一般医薬品、さらには様々な有効成分を含む医薬部外品、なども開発されているものの必ずしも完璧ではなく、女性は服用できないなどの問題もあります。
また、植毛技術も飛躍的発達をとげたものの、あくまでも移植であり増毛することはできないのです。
経済産業省は、再生医療製品と周辺産業を含めた国内の市場規模は2020年までにおよそ950億円、世界市場は2020年までに1兆円程度まで拡大すると見込んでいます。
脱毛症や薄毛関連の国内頭髪関連市場は、植毛、かつら、育毛サロンなどの育毛サポート、育毛薬や医薬部外品などで、2,000億円程度の市場規模だと矢野経済研究所は見積もっており、再生医療が導入されるとさらに飛躍的に拡大すると思われているのです。
2013年には、再生医療を従来の医薬品とは異なる新たな分野として定義した改正薬事法と、再生医療新法がスタートして、再生医療を推進する法的制度も整ったのです。
詳しく見る ⇒ 再生医療新法により資生堂の頭髪再生医療事業が加速化
髪の毛の再生医療の現状
国内で髪の毛の再生医療をリードするのは理化学研究所です。
理化学研究所の多細胞システム形成研究センター・器官誘導研究チームでは、次世代再生医療としての器官再生医療に向けた技術開発を進め、その実現を目指し手研究を進めているのです。
研究のリーダーである辻孝氏の研究室の器官再生プロジェクトでは、
- 歯科再生
- 唾液腺再生
- 涙腺再生
- 毛髪再生
の研究を行っています。
詳しく見る ⇒ 辻孝研究室
現在の薄毛や脱毛の治療は、男性ホルモンの影響を阻害する薬剤の使用や、正常な毛包を切り取り脱毛部位に移植する自己植毛術が一般的になりつつあるが、
全ての症例に有効なわけではなく、また髪の毛の数を増加させることはできないとして、脱毛に悩む患者自身の細胞を使って、
正常な毛包のもととなる「毛包原基」から毛包を再生する「毛髪再生医療」の研究を進めているのです。
具体的には、患者の頭皮から髪の毛の根元の毛包をとりだし、これを体外で増殖させ、患者の頭皮に移植するのです。
この再生医療方法は自毛移植とは異なり、必要に応じて髪の毛を増やすことが可能なのです。
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毛幹細胞から毛包を再生する
さらに辻氏の研究質では、独自に開発した「器官原器法」により、成体の毛包幹細胞から人工的に再生毛包原器を作製し、任意の場所の皮膚内に移植して、毛包を再生し、発毛させることにも成功しています。
この技術により、幹細胞から毛包を作ることが出来、患者の毛包細胞を必要とせずに髪の毛を再生することが可能であり、毛髪再生医療の実用化に向けて大きく前進したのです。
辻研究室では、今後はヒト自己幹細胞を用いて毛包原基を再生し、移植する医療技術を確立し、毛髪再生医療の実現にむけて研究を進めるそうです。
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資生堂の髪の毛の再生医療
資生堂が髪の毛の再生医療に本格的に取り組んでいることは既にこのサイトでもご紹介しました。
詳しく見る ⇒ 毛髪の再生医療での薄毛治療も間近
資生堂では、2014年に、理化学研究所のある神戸医療産業都市の「神戸バイオメディカル創造センター」内に研究所を開設し、2018年の事業化を目指して着々と研究を進めているのですが、その責任者は、資生堂・新領域研究センター ・再生医療プロジェクトの岸本治郎室長です。
再生医療プロジェクトでは、2013年にカナダのバイオベンチャー企業であるレプリセル社と共同開発提携をしていますが、レプリセルから、著名な2名の研究者をファウンダーとして招聘し、着々と準備が進んでいるようです。
資生堂が進めているのは、10年以上の基礎研究や臨床研究の積み重ねで安全性が立証された『自家細胞移植技術』です。
脱毛症や薄毛に悩む患者の頭皮から採取した細胞を培養し、脱毛部位に注入し、脱毛部位の毛包を再活性化させることで、健康な毛髪の成長を促す技術です、レプリセルが技術の特許を有しています。
再生医療プロジェクトの岸本治郎室長は、
通常、髪の毛は成長した後、自然に抜け、再び同じ毛穴から新しい毛髪が生えてくる「毛周期(ヘアサイクル)」を繰り返しているが、薄毛や脱毛に悩む人は、このサイクルに異常が生じている。
国内での薄毛の治療薬は、内服薬であるプロペシアと、頭皮に直接塗布するリゲインであるがいずれも、男性型脱毛症に特化した医薬品で女性は利用できなかったり、高濃度のものは使用ができないなどの制限がある。
自家細胞移植技術は女性にも施術可能な画期的な技術 で、従来の薄毛療法は髪の毛を作り出す『毛包』を活性化させる方法だが、自家細胞移植技術は患者の細胞を採取し、培養して元に戻す再生医療で、これまで男性に限定されていた薄毛治療が女性にも施せるようになると女性への適応を強調している。
2014年に再生医療に関する新しい法律が成立したことで、頭髪再生事業を加速度的に進められる条件が整い、人に対する効果の実証試験はへて2018年に実用化を目指したいとしています。
具体的には、病院で細胞を採取し、それを「資生堂」の研究所で培養後に、再び病院に戻し、患者の脱毛している部分の頭皮注入するという手順になるようだ。
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資生堂の髪の毛の再生医療の画期性
資生堂の髪の毛の再生医療の実現には非常に期待が持てるのだが、資生堂では再生医療の画期性についてさらに述べている。
- 患者の身体的負担が少ない
- 患者自身の細胞を使う
- 効果が持続する
- 男女を問わず施術が可能
詳しく見る ⇒ 資生堂の再生医療の画期性
身体的負担が少ない
これは、植毛手術に比べての利便性を述べていると思われる。
植毛手術は、患者の頭皮から毛根を抜き取り、脱毛した部分に移植する方法だ。従来の帯状に皮膚をはぎ取る手技から、毛根を円状にくりぬく方法に進歩したので傷や痛みが少なくなったと言っても外科的手術に違いないので、再生医療による負担が軽減することは間違いない。
患者自身の細胞を使う
資生堂が進めているのは上において説明したように、患者の毛髪細胞を体外で培養し、それを患者の頭皮に注入する方法なので免疫学的な拒絶反応が起こらないが、体外での増殖培養は必須であり、培養時間が必要となる。
理研の辻孝研究室で行っているような、幹細胞を用いれば、常時移植可能な毛包細胞をストックしておくことが可能となることから、次のステップとしては、幹細胞さらにはiPS細胞を用いた再生医療に進んで欲しいものだ。
効果が持続する
資生堂では、患部に直接、塗与するような治療法や飲み薬の場合には、それを止めると育毛効果も止まってしまうが、再生医療は施術を行うことにより一定期間効果が持続することは画期的としているが、AGAの男性型脱毛症の場合にはテストステロンが変化したDHTが毛包の育毛活動を抑えてしまうことが原因であると言われていることから、再生した毛包に対するDHTの作用が脱毛に導いてしまうのではないかという点は気掛かりだ。
男女を問わず施術が可能
国内の1200万人の男性が薄毛に悩んでいると言われているが、女性の薄毛人口も600万人ともいわれ、女性においても薄毛は深刻な問題である。これまでの治療薬は男性ホルモンに働きかけるものであったり、濃度の高い治療薬は女性での利用が禁じられていたりしているが、再生医療では女性においても男性と同様に利用できるのがこの技術の強みだとしている。
資生堂では2018年の実用化を目指しており、髪の毛の再生医療の実現も間近だ。
気になるのは価格!!
AGAにしても女性の薄毛にしても現在の健康保険では疾患として認定されていないので保険の適応外になることは確実と見られ、
保険が適応されるのは事故による頭皮損傷による脱毛や円形脱毛症などの限られた脱毛だけと見られるのですが、
保険適応外でも自毛移植と比べて安いのではないかと思われるので、大いに期待したいものです。
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