ファイザーはプロペシアのジェネリックでバイアグラの穴埋め
日本毛髪科学協会の認定講師で毛髪診断士の けんぞう です。
今日もご覧になっていただきありがとうございます。
今日も科学的根拠に基づいた育毛関連の情報をお届けしたいと思います。
はじめに
ファイザーはプロペシアのジェネリックの発売を開始した。
それもメルクの特許期限が切れる2年半も前に、、、
ファイザーとプロペシアの販売会社であるMSDの間にどのような駆け引きがあったのかは不明だが、、
そのは背景には、
ファイザーにはプロペシアのジェネリック発売を急ぐ理由があった
といわれているのだが、
ファイザーがプロペシア発売を急いだ理由とは、、、
ファイザーがプロペシアのジェネリックを発売開始
ファイザーがメルク(国内ではMSD)の男性型脱毛症治療薬であるプロペシアのジェネリックの製造販売権を獲得したのは2015年2月だった。
しかし、医療関係者の間では、ファイザーがプロペシアのジェネリックを発売するのは早くても2019年10月以降だろうと予想されていた。
医薬品には様々な特許があるのですが、特に重要な特許は物質特許と用途特許です。
物質特許は薬の有効成分に関する特許、用途特許はその有効成分をどのような疾患に使うかという特許だが、
具体的には「プロペシアの有効成分フィナステリドは男性型脱毛症に有効だ」という内容の特許で、
この特許が有効な間は、
どの製薬会社も、「フィナステリドを男性型脱毛症の治療薬として製造販売することは禁止」されているのです。
特許の有効期間などについてはその会社しか分からない部分が多いのだが、医療関係者の中ではプロペシアの特許が切れるのは2019年10月だろうと推察されていた。
しかし、ファイザーは2015年4月6日にプロペシアのジェネリックを発売した。
詳しく見る ⇒ ファイザーがプロペシアのジェネリックを発売開始
これは医療関係者の予想を覆すものであった。
- ファイザーとメルクの間に何らかの取引があったのか?
- ファイザーはメルクの特許の穴を見つけたのか?
その詳細はファイザーやメルク社しか分からないであろう、、、
ファイザーはマイランとの共同販売する模様だが、マイランはアメリカに本社を置く多国籍ジェネリック&スペシャリティー医薬品企業だが、2013年にファイザーと共同販売契約を交わしている。
メルクとMSDの関係について簡単に記載しておこう。
メルクは、正式にはメルク・アンド・カンパニー(Merck & Co.)でアメリカに本社を置く世界的な製薬会社だ。ドイツの化学・医薬メーカー、メルク(Merck KGaA)から第1次大戦中に独立したのが始まりで、ドイツのメルク(Merck KGaA)と区別するため「米国メルク」ともいわれる。Merck & Coは世界140カ国以上で事業を展開しているが、米国以外ではMerck & Coを使わず、MSD(Merck Sharp & Dohme)という社名を使っている。日本では1984年に万有製薬がMerck & Coの子会社となり、2010年にシェリング・プラウと統合して「MSD株式会社」が誕生し、Merck & Coの日本支社となっている
ファイザーはAGAの文言は使えない
プロペシアのTVコマーシャルではしばしばAGA(エージーエー)という言葉を目にする。
AGAとは、 Androgenetic Alopeciaの略で、日本語で言えば男性型脱毛症なのだが、ファイザーはプロペシアジェネリックではAGA(エージーエー)という用語を使うことができないのだ。
AGAは薄毛や抜け毛、ハゲの意味として一般的に認識されるようになったのだが、MSDが日本商標登録をしておりMSD以外の製薬会社は「AGAという言葉を使用することができない」のだ。
ファイザーのジェネリックには、「男性型脱毛治療薬」と表記されており、コマーシャルでもAGAという言葉は使われていない。
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プロペシアの売上げは減少している
プロペシアは世界で唯一の男性型脱毛症の医療用医薬品で、2005年の販売開始以来、全世界で10年にわたって男性脱毛市場を独占してきた。
副作用と特許切れでプロペシアの売上げは低下
2014年2月にメルクが発表した2013年のプロペシアの売り上げは、2012年から2013年で33%も減少している。
アナリストは、売上げ減少の一番の要因はプロペシアの副作用が影響していると分析している。
それは、2011年にアメリカでプロペシアの副作用が発表され、2012年の売上は10%も減少している。
さらに、2013年にはアメリカでメルクの特許が切れ、プロペシアのジェネリックが発売され、
ジェネリック発売後の3ヵ月間の売り上げは前年度同時期より、108M$から68M$と37%も減少している。
国内での売上げは、2006年の67億円から2008年の127億円と3年間で倍増し、
50万人程度が服用しているといわれているが、最近はインターネットで海外から個人輸入しての服用者が100万人いるともいわれ、国内売上げ高は200億円程度とみられている。
国内の医者や脱毛症患者はプロペシアの性機能に関する副作用について寛容すぎるとの指摘もあり、プロペシアの性機能に関する情報が周知すれば売上げが大幅に増加するとも思われないようだ。
ファイザーのジェネリック発売のもくろみ
2011年の売上げが5757億6,600万円と前年比10.7%増で武田薬品を抜いて国内売上高でトップにたったファイザー。
しかし、2014年度は前年度比5%減となる5,020億円で、
ファイザーの収益を支えてきた脂質異常症治療薬・リピトールやCa拮抗薬・ノルバスクなどの長期収載品による減収で、厳しい状況なのだ。
バイアグラの特許が切れジェネリックが解禁
その様な状況の中で、ED治療薬であるバイアグラの特許がアメリカでは2012年に切れ、国内でも2014年に切れ、続々とジェネリックが発売された。
ED治療薬の世界市場は年間50億ドル(4,200億円)ともいわれ、年々成長している。
2012年のED治療薬の3大主力商品の2012年の全世界における総売上は45億ドルで、
内訳は、
- バイアグラ(ファイザー;シルデナフィル) : 20.51億ドル
- シアリス(イーライリリー;タダラフィル) : 19.27億ドル
- レビトラ(ベーリンガー;バルデナフィル) : 3.07億ドル
で、ファイザーのバイアグラが首位を占めている。
競合品の出現や世界各地でバイアグラが特許期限を迎えるに連れて、
バイアグラのED市場における1社独占の時代が終わり、
バイアグラのシェアは2000年の90%以上から2012年には47%にまで下落した。
国内でもバイアグラのジェネリックが発売
1998年にアメリカで発売され、社会現象にまでなったバイアグラですが、
国内でも2014年7月にファイザーの特許が切れ、国内のED市場も群雄割拠の時代を迎えた。
その先陣を切ったには東和薬品。
ファイザーとの差別化を図った水なしで飲める口腔内崩壊錠で、なんとコーヒー風味とレモン風味。
価格はバイアグラの50mg・1,500円から30%は安くなるだろうと予想されていたが、50mg錠が1200円。
しかし、東和薬品に続いて合計9社から発売されるに伴って実勢価格は900円前後だという。
ファイザーのエスタブリッシュ医薬品事業部門 を立ち上げた
ファイザーでは、医療の現場で広く、長く使われてきた実績があり、特許が切れた医薬品をエスタブリッシュ医薬品と呼んでいます。
そして、エスタブリッシュ医薬品には次のような特徴があると考えています。
エスタブリッシュ医薬品は、効果や安全性に対する評価が確立された、
新薬よりも一般的に安価な医薬品です
男性患者のQOL向上に貢献
ファイザーは、プロペシアのジェネリック発売に際して、ジェネリックの発売理由について、
『男性患者のQOLの向上にさらなる貢献するため』
と述べている。
すなわち、ファイザーは、「男性の悩みであるED」に対するバイアグラを発売しているが、同じく「男性の悩みであるハゲ」に対する治療薬も品揃えして、男性のQOLの向上(生活の質の向上)に貢献しようというのだ。
バイアグラのジェネリックによる売上げ低下をプロペシアのジャネリックで穴埋めしよう
という意図のあることが明確なのだ。
これは、「江戸の敵(かたき)を長崎で打つ」ならぬ、
バイアグラの敵をプロペシアで討つ ということなのだ。
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ファイザーはジェネリックで儲けられるのか
2019年と見られていたプロペシアのジェネリックが2015年に発売されたということは、2019年まで有効と思われたメルクの特許が既に切れたと見なして良いのだろう。
MSD関係者は、ファイザーのジェネリックの出現は、「プロペシアの売上げに対するマイナス影響は避けられない」と見ているということで、200億円程度と思われるプロペシアの売上げに強い逆風が吹き始めたことは間違いない。
しかし、ファイザーのジェネリックがプロペシアの市場を一気に塗り替えると考えるのは早計すぎる。
さらに多くのジェネリックが発売される
2015年の夏~秋にかけて他の製薬企業もプロペシアのジェネリックを発売する予定だとも噂されており、バイアグラ同様、10社ほどのジェネリックが登場することも充分あり得る。
メルクのプロペシアの価格は1mg錠が250円で、1ヵ月では7,500円であるが、ファイザーの価格は20%安のようだ。
しかし、プロペシアは保険適応外だから薬価未掲載品で自由価格。育毛クリニックでは初回1ヵ月5,500円という価格で処方しているところもあることから、今後多くのジェネリックが発売されるに従い、30%安、40%安で処方するクリニックが出てくることは間違いない。
プロペシアの処方患者は50万人程度で、インタネットで個人輸入して服用している人が100万人とも言われるが、これらの服用者が国内のジェネリックの購入に転じるためにはかなり価格破壊が進まなければ不可能で、結局はプロペシアの服用者をメルクとファイザーなどのジェネリック販売会社で競い合うことになるのだろう、、、。
ファイザーは、バイアグラのジェネリックの発売で、痛手を被ったのだが、
ジェネリックを発売しても更なる服用者の増加は見込めない と思われる。
新薬が発売されればジェネリックも苦戦する
さらに気になるのは、グラクソ・スミスクラインが、前立腺肥大症治療薬であるアボルブの男性型脱毛症治療薬としての適応拡大申請を準備中とも、申請中との情報があることだ。
アボルブはグラクソスミスクラインが前立腺肥大症治療薬として全世界で発売している。
有効成分はデュタステリドだが、プロペシアの有効成分フィナステリドと同様に、5α-リダクターゼ抑制作用があり、さらに、フィナステリドはⅡ型5α-リダクターゼしか抑制しないのに比べ、デュタステリドはⅠ型5α-リダクターゼも、Ⅱ型5α-リダクターゼも両方し、プロペシアよりもAGAに対する効果が大きいといわれている。
アボルブを適応外処方で処方している育毛クリニックもあり、また、個人輸入で服用している患者も多いという。
脱毛症に対する効果が大きい分、プロペシアよりも性機能に対する副作用は大きいのだが、アボルブの男性型脱毛症の適応拡大が承認されれば、プロペシアからアボルブへ乗り換える患者も多いと思われる。
アボルブの適応拡大が承認されれば脱毛症市場を一気に席巻する可能性がある
グラクソスミスクラインは申請した、申請準備意中ともいわれ詳細は不明だが、承認時期は来年以降とみられているが、
今後、AGA市場は混戦となることは必至のようだ
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