日本毛髪科学協会の認定講師で毛髪診断士の けんぞう です。
今日もご覧になっていただきありありがとうございます。
今日も科学的根拠に基づいた育毛関連の情報をお届けしたいと思います。
目次
はじめに
AGAの治療ではプロペシアに続いてアボルブも使えるようになりました。
アボルブとプロペシアはどのように違うのでしょうか?
実証済み!プロペシアを上回る発毛効果!
AGAにはプロペシアよりアボルブが有効です!!
育毛クリニックのこんな広告が目に付きますが、、、
- プロペシアを飲んでいる人はアボルブに変えた方が良いのでしょうか?
- アボルブにはプロペシアのように性機能に関する副作用はないのでしょうか?
あなたの疑問に答えます。
プロペシアより有効なAGA治療薬があるのか?
発毛クリニックのホームページに、こんな宣伝がありました。
患者さんは、プロペシアを1年間服用したが、改善が見られないということで当院を受診されました。
プロペシアで改善がなかったとのことなので、プロペシアの有効成分フィナステリドよりも効果的に男性ホルモンを抑制することが証明されているアボルブの内服を開始しました。
内服を開始してから6カ月目の頭部の写真ですが、細い頭髪の抜け毛が少なくなり、頭頂部の毛髪が太くなり、患者さんに大変満足していただいています。
プロペシアは国内で唯一のAGAの医療用医薬品のはずですが、国内でプロペシアより有効なAGA治療薬があるのでしょうか?
確かに国内でもアボルブは医療用医薬品として厚労省に認可されていますが、適応症は「良性前立腺肥大症」のはずです。
こんな記載もあります、、、
「前立腺肥大症患者以外はアボルブを飲んではいけないのではないか?」
「アボルブはAGAの治療薬ではないではないか?」
とこんな疑問を抱く方もおられるかも知れません。
そして、次のように続きます、、、
プロペシアも初めは前立腺肥大症の治療薬として開発した薬です。
開発途中で発毛効果が認められ、AGA治療薬として開発変更されたのです。
前立腺肥大でなければアボルブを服用してはいけないなら、プロペシアも服用してはいけないはずです。
いやいや、、、それは違うでしょう!
プロペシアも当初は前立腺肥大の治療薬として開発が始まったのですが、発毛作用があることが確認されたことから、
男性型脱毛症を対象にした開発を実施してその成績で申請してAGA治療薬として厚労省から承認を得ています。
アボルブでは前立腺肥大症の治験データをもとに認可を申請して前立腺肥大症の薬として認可されていますが、AGA治療薬としては治験も行われていませんし、申請もされていないのです。
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アボルブはどんな薬か?
アボルブとは、英国のグラクソ・スミスクライン社の前立腺肥大治療薬です。
2001年11月に米国で、2002年7月に欧州で承認され、国内では2009年9月に発売されました。
国内での商品名は「アボルブavolve」ですが、海外では「アヴォダート avodart」として販売されています。
アボルブの有効成分は、デュタステリド(dutasteride)で作用は5α-リダクターゼ抑制です。
メルク社のプロペシアの有効成分はフィナステリドで、作用はやはり5α-リダクターゼ抑制ですが、多少異なります。
テストステロンは5α-リダクターゼという酵素によってジヒドロテストステロン(DHT)に変化し、DHTは前立腺を肥大させたり、頭髪の成長を妨げたりするのですが、
5α-リダクターゼには、
- 1型5α-リダクターゼ
- 2型5α-リダクターゼ
の2種類があるのです。
プロペシア : 2型5α-リダクターゼを抑制
アボルブ : 1型5α-リダクターゼを抑制
2型5α-リダクターゼを抑制
私達の体の中のDHTは、
- 1型5αリダクターゼがDHTの30~40%を生産
- 2型5α-リダクターゼがDHTの60~70%を生産
しているといわれ、グラクソスミスクライン社では、1型も2型も抑制するアボルブは、メルク社のプロペシアよりより前立腺肥大に有効だとしています。
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アボルブのAGA改善効果は?
アボルブの有効成分である、デュタステリドは元々良性前立腺肥大(BPH)の治療薬として開発された薬です。ここで良性というのは、癌性ではないということです。
アボルブは、プロペシア(フィナステリド)には作用が無い、1型5-αリダクターゼも阻害するのが特徴です。
グラクソスミスクライン社の成績
気になるアボルブのAGAに対する効果です。
グラクソスミスクライン社では、デュタステリドのAGAに対する臨床試験をやっています。
21歳から45歳の男性型脱毛症(AGA患者)に、
アボルブ(デュタステリド)を0.05mg/日、0.1mg/日、0.5mg/日、2.5mg/日を、あるいはプロぺシア(フィナステリド)5mg/日を24週間にわたって投薬しました。
その結果、
デュタステリド2.5mg/日群は、 フィナステリド5mg/日群よりも有意な頭髪の発毛効果が認められ、デュタステリド2.5mgの服用は、フィナステリド1.5倍の効果が認められたと発表しています。
詳しく見る >>> アボルブの第2相試験成績(英文)
The importance of dual 5a-reductase inhibition in the treatment of male pattern hair loss: Results of a randomized placebo-controlled study of dutasteride versus finasteride
J Am Acad Dermatol 2006;55:1014-23.
しかし、グラクソ・スミスクライン社は男性型脱毛症での開発をこの試験後に第2相試験段階で中止しています。
グラクソスミスクライン社では中止理由は明らかにしていませんが、
Wikipediaによるとプロペシアによく似ているために商業的な成功が期待できなかったからではないかと推測されています。
韓国ではAGA治療薬として発売
アボルブは世界で約90ヵ国で前立腺肥大治療薬として発売されていますが、唯一、韓国では男性型脱毛症治療薬として発売されています。
韓国においておこなわれて臨床試験成績(第3相試験)が公表されています。
詳しく見る >>> アボルブの第3相試験成績(英文)
Efficacy, safety, and tolerability of dutasteride 0.5 mg once daily in male patients with male pattern hair loss: A randomized, double-blind, placebo-controlled, phase III study
J Am Acad Dermatol. 2010 Aug;63(2):252-8. Epub 2010 Jun 3.
この試験では、男性型脱毛症(AGA)患者に、アボルブ0.5mg/日あるいはプラセボ(偽薬)を6ヵ月投与しました。
6ヵ月後に、アボルブ投与群では、1平方センチ当たり12.2本の発毛が見られたのに対し、プラセボ群はで4.7本で、アボルブには有意な発毛効果が認められたと結論しています。
アボルブの「オフラベル処方」とは?
アボルブは世界90ヵ国で販売されていますが、適応症は、韓国を除いて前立腺肥大症です。
韓国では2009年に男性型脱毛症(AGA)治療薬として承認されています。
日本ではも前立腺肥大症治療薬として、厚生労働省から認可されていますが、残念ながら、男性型脱毛症AGA治療薬としては、認可されておりません、、、。
では、男性型脱毛症患者が服用して良いのでしょうか、、、。
実際、育毛クリニックでは 「アボルブを育毛の目的で処方している」 ところが数多くあるようです。
これは、「オフラベル処方」とか「適応外使用」といわれます。
「適応外使用」とは、厚労省によって承認された効能以外の目的で医薬品を使用することを言います。
医薬品の添付文書には、「効能・効果(適応)」として、有効性が確かめられた疾患(適応症)が明記され、この疾患での使用を目的に認可されているのです。
しかし、実際の医療現場では、添付文書に記載されていない疾患に対して、医師の判断でその医薬品が処方される場合があり、これを適応外使用やオフラベル使用というのです。
アボルブを男性型脱毛症(AGA)の治療目的に処方する場合は、「適応外使用」になり、処方する医師の裁量と、患者の効果や副作用に対する了承があって初めて処方が可能になります。
しかし、適応外使用で服用した医薬品によって副作用などの薬害が発生しても医薬品副作用被害救済制度の対象にならない場合があるので注意が必要です。
アボルブの副作用
男性ホルモンに関与する医薬品で、5α-リダクターゼ抑制に関してはプロペシアよりも強いとのことですから、当然、アボルブも性機能に関する副作用が報告されています。
アボルブの添付文書には下記のような記載があります。
性機能に関する副作用は、
- 勃起不全 : 13例(3.2%)
- 性欲減退 : 7例(1.7%)
- 乳房障害(女性化乳房、乳頭痛、乳房痛、乳房不快感) : 6例(1.5%)
だったようです。
プロペシアでの性機能に関する副作用も、1~5%と報告されていますので、ほぼ同じ程度でしょうか、、、
詳しく見る >>> プロペシアの性機能に関する副作用は本当です
アボルブはプロペシアよりAGAに効果があるのか?
アボルブは前立腺肥大症の適応では100ヵ国に近い国で発売されています。
育毛剤として発売されているのは韓国の1ヵ国だけのようです。
グラクソスミスクライン社は、アボルブのAGA治療薬としての開発は第2相試験まで行っており、第3相試験を行えば米国でもFDAの承認を得られたはずですが、2006年の韓国での第3相試験以降、AGAを対象とした臨床開発は行っていないようです。
グラクソスミスクライン社がAGA適応での開発をストップした理由は?
2013年の国内のヘアケア市場規模は、4,323 億 5,000 万円と大規模ですが、米国のヘアケア市場はもっと大きいのですが、グラクソスミスクライン社はなぜ、AGAでの開発をストップしたのでしょう。
米国で新薬として承認されるには、
- 先行品とは異なる作用機序である
- 先行品よりも有効である
ことが必須条件なのです。
すなわち、
- プロペシアとは異なった作用である
- プロペシアよりも有効である
という条件をクリアーできなかったと判断せざるを得ません。
- アボルブはプロペシアと同じ5α-リダクターゼ抑制作用
- アボルブはプロペシアよりやや強い程度
さらに、アボルブは「液体のカプセル製剤」であるなど、プロペシアを上回ることが出来なかったのでしょう、、
現時点では、上記に示した2006年の臨床試験成績より公平な結果はありませから、
アボルブは6ヵ月服用でプロペシアの1.5倍の効果
オフラベル処方だから自己の責任で服用すること
よく考えてください。
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