頭髪再生医療による薄毛治療の展望
日本毛髪科学協会の認定講師で毛髪診断士の けんぞう です。
今日もご覧になっていただきありありがとうございます。
今日も科学的根拠に基づいた育毛関連の情報をお届けしたいと思います。
目次
はじめに
米国のサンフォード・バーナム医学研究所はヒト多能性幹細胞をマウスに移植して頭髪の発生に成功したという。
頭髪の再生医療は何処まで進んでいるのか?
頭髪の再生医療で薄毛治療が可能になるのか?
頭髪再生医療の現状と展望をみてみよう。
今アメリカでも頭髪の再生医療の研究が進んでいる
アメリカのサンフォード・バーナム医学研究所は、1月27日に、
ヒトの多能性幹細胞を使って新しい毛髪を生やすことに成功した
と発表した。
頭髪の再生医療では、頭部の毛髪毛包を移植する方法であったが、
今回の報告では、ヒトの多能性幹細胞を用いて、ヒトの毛髪を再生したという点で大きく異なるのです。
我々成人においては、毛乳頭細胞は体外では増殖できないが、今回の研究ではヒトの多能性幹細胞をマウスに移植し、毛乳頭細胞へ分化させ、毛髪の発生を確認している。
今回の実験は、ヒト多能性幹細胞をマウスに移植したのだが、サンフォード・バーナム医学研究所では、今後はヒトへの移植を行う臨床実験を予定しているという。
今回の研究のポイントは、今までは頭髪を生み出す毛乳頭細胞を体外で増殖増させることが出来なかったのだが、幹細胞を頭髪毛乳頭細胞に分化させることが出来るようになったということなのです。
この方法が実用化されれば、脱毛症患者のための毛乳頭細胞を無限に作り出すことができるようになるのです。
スタンフォードバナー研究所は、米国フロリダ州とカリフォルニア州に拠点を持つ非営利公益法人で、疾患の原因分子を発見し、革新的な治療を探索することに特化している研究所で、米国内で最も成長著しい研究所の一つと言われており、
幹細胞や新薬の発見で世界レベルの研究力を有していることでも有名な研究所ですから、今後大きな期待が持てそうなのです。
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再生医療とは
再生医療とは、『何らかの原因によって損傷を受けた生体の機能を幹細胞などを用いて復元させる医療』のことを言います。
例えば、心臓が先天的に、あるいは何らかの原因でポンプとしての機能を失ってしまったときに、「幹細胞などを用いて心臓を作り」、その心臓を移植するような医療のことです。
現状の医療では、臓器移植などにおいてはドナー(臓器提供者)が必要ですし、手術や薬では治療出来ない疾患や障害をも治すことが出来るのです。
ハゲの治療においても、現状では自分の頭部に生えている毛髪をハゲた部位に移植する、自家移植しか方法がありませんが、「幹細胞で毛髪を作り」、それをハゲの部分に移植することができるようになるのです。
幹細胞とはなにか
再生医療では、「幹細胞を用いて復元させる」、「幹細胞で臓器を作る」、、という表現が度々出てくるのですが、幹細胞とはなになのでしょう。
私達の身体は、およそ60兆個の細胞で作られています。
心臓は心臓の細胞で作られ、脳には脳の様々な細胞が有り、それらの細胞の働きによって私達の生命は維持されているのです。
しかし、60兆個の細胞は、元々は1個の受精卵です。卵子と精子が受精したたった1個の受精卵が、心臓を作り、脳を作り、皮膚を作り、頭髪を作り出したのです。
つまり、受精卵は、心臓の細胞にも、脳の細胞にも、皮膚にも、頭髪にも変化する能力を持った細胞なのです。
このような、様々な細胞に分化できる能力を持った細胞が、『幹細胞 Stem Cell』と呼ばれる細胞なのです。
幹細胞には、胚性幹細胞と体性幹細胞とがあります。
【胚性幹細胞;Embryonic Stem Cell (ES細胞)】
胚性幹細胞は、英語ではEmbryonic Stem Cellといわれ、通常、ES細胞と言われますので、ES細胞の方が馴染みが多いと思います。ES細胞は、受精卵後にある段階(胚盤胞)まで分化した胚(内部細胞塊)から分利される幹細胞で、ほぼ全ての組織(細胞)への分化能をもっている万能細胞です。
【成体幹細胞;Tissue Stem Cell】
私達の身体の組織に存在する、ある程度の多分化能力を持つ、発生過程の細胞死や、損傷組織の再生時に新しい細胞を供給する役割を持つ細胞ですが、ES細胞に比べて分化能は限定されています。
iPS細胞とは
再生医療に最も期待が持てる細胞は、言うまでもなくES細胞なのですが、受精卵から分離し、且つ、人間にもなり得る細胞ですから、このような細胞を使うことは人間の倫理上で問題があると、各国で人間のES細胞を用いた研究は自粛されています。
また、成体幹細胞は分化できる範囲が限定されているためかなり限定的なのです。
そこで、2006年、2007年に京都大学の山中伸弥教授らが、ヒトの皮膚細胞に4つの遺伝子を導入するこによって人工的に作り出したES細胞様の多能性幹細胞で、人為的に作り出した幹細胞ということでiPS細胞(induced Pluripotent Stem Cell)と呼ばれています。
iPS細胞を用いれば、自己の幹細胞を治療に用いることができることから、現在、多くの臨床応用が進められているのです。
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頭髪再生医療の現状と展望
頭髪再生医療には様々な方法が有り、多くの研究者が様々な角度からの取り組んでいます。
頭髪の再生医療では、
- 体性幹細胞を使う方法
- iPS細胞を使う方法
- 組織を使う方法
- その他の方法
が考えられ、それぞれ一長一短がありますが、その現状を見てみましょう。
体性幹細胞を用いる方法
今回のアメリカのサンフォード・バーナム医学研究所の発表のように、自分の体性幹細胞を使い、それを毛包細胞(毛母細胞や毛乳頭細胞)まで分化させ、分化した毛包細胞を頭皮に移植させて発毛させる方法です。
今回は、ヒトの幹細胞を使ってマウスに頭髪を生やすことに成功したのですが、この方法でヒトの頭皮に発毛させることはそんなに難しいことではないと思われます。
問題としては、
- 免疫の問題
- 培養に時間がかかる
ということが考えられます。
今回はヒトの幹細胞から分化させた毛包細胞を、ヌードマウスという自己免疫系を持たないマウスに移植しましたが、実用化となると、Aさんの頭髪を再生するには、Aさんの幹細胞を使う必要があります。Aさんの幹細胞で作った毛包細胞をBさんに移植すると、拒絶反応が起こる可能性があるのです。
さらに、Aさんから採取した幹細胞を毛包細胞まで分化増殖するには時間がかかるので、その点もデメリットです。
iPS細胞を用いる方法
慶応義塾大学病院皮膚科・毛髪外来の大山准教授のグループは、iPS細胞を用いた頭髪の再生医療を目指しており、ヒトiPS細胞とマウスの細胞を用いて毛包細胞に分化させることに成功しています。
この方法であれば、iPS細胞を用いれば免疫の問題はクリアーできますから、予めたくさんの毛包細胞を準備しておけば患者に直ぐに移植することが出来るのです。
しかし現段階では、毛包から生える毛の太さは実際の20分の1程度で、産毛程度だそうで、マウスまじりのものだそうです。さらに、1本を作るのに100万円程度の費用がかかり、現実的とは言い難い段階のようです。
詳しく見る >>> iPS細胞による頭髪再生医療
組織培養による方法
最も進んでいるのがこの方法です。
患者の頭皮から毛包細胞を取りだし、体外で培養増殖して本人の頭皮に移植する方法で、資生堂は2018年の実用化を目指して進めています。
資生堂はカナダのバイオベンチャー・レプリセルライフサイエンスの自家毛根培養技術を応用して、本年11月からヒトを対象にした臨床試験を開始するそうです。
模様だ費用や時間などの詳細については公表されていませんが、数年後には実際に医療現場での頭髪再生医療が開始されることは確実でしょう。
詳しく見る >>> 再生医療新法により資生堂の頭髪再生医療事業が加速化
詳しく見る >>> 毛髪の再生医療での薄毛治療も間近
その他の方法
資生堂の方法と似ていますが、東京理科大(現:理化学研究所)の辻孝教授らのグループは、マウスのヒゲの毛包から、上皮性幹細胞と毛乳頭細胞をとり出し、体外で培養して毛包まで分化させ、別のマウスの背中に移植したところ、74%のマウスで背中に毛が生え、天然のヒゲと同様に1センチ程度まで成長したそうです。さらに、その後生え替わり、周りの組織との親和性も確認されたそうです。
広島大学大学院の吉里勝利教授らは、患者の毛乳頭細胞を採取して体外で培養し 、1,000~10,000倍に増殖したのちに男性型脱毛症や円形脱毛症などの患者に移植して発毛させる細胞培養受託サービ スの事業化を目指してベンチャー企業を立ち上げています。
国立循環器病センター、神戸大学病院、大阪工業大学は、他人の健全な頭皮を利用して毛の生えやすい基盤を作り、薄毛の人の頭部に移植することによる毛髪再生医療の研究を行っています。
毛髪の再生医療の研究は着々と進んでいます。
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頭髪再生医療の実用化は間近だが
方法はともかく、頭髪の再生医療の実用化は間近なのです。
薄毛を頭髪再生医療で治すことがもうすぐ出来るようになります。
しかし、、、、、
費用の問題です。
残念ながら、AGA(男性型脱毛症)は疾患として認められていないので、「健康保険が使えない」のです。
国内には薄毛に悩む男性は1,200万人いるそうですから、AGAの保険適用を承認したら健康保険制度は破綻してしまいますから、今後とも健康保険の適用になる可能性はないでしょう、、、、。
まとめ
頭髪再生医療で保険適用が可能なのは、
- 先天的な脱毛症
- 円形脱毛症などの病的脱毛症
- 怪我や外傷による毛根の欠損による脱毛
だけだと思われます。
頭髪再生医療が可能になっても、若ハゲは予防が第一
ということです。
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