毛髪の再生医療はどこまで進んでいるのか?
日本毛髪科学協会の認定講師で毛髪診断士の けんぞう です。
今日もご覧になっていただきありありがとうございます。
今日も科学的根拠に基づいた育毛関連の情報をお届けしたいと思います。
はじめに
さまざまな育毛剤が販売されていますが、
頭髪の再生医療が気になります。
頭髪の再生医療の現状については、
でお伝えしましたが着々と進んでいます。
先日、
日経メディカルに、
トレンド!根本治療の可能性も秘めた毛髪再生医療;毛包を再構築する薄毛治療の開発進む
という記事が掲載されました。
根本治療と聞くと心が躍りますが、
医学サイトですから見ておられない方も多いと思います。
内容的にはこのサイトで今までお伝えしてきたこととおなじですが、
薄毛が気になる人は是非とも目を通して下さい。
頭髪の再生医療とはなに?
毛髪の再生医療としては、
自家植毛
が始まりです。
自分の頭髪をハゲた部分に移植するという自毛移植は1990年代にアメリカで開発され、
国内で自毛移植の実績が最も多いと言われる紀尾井町クリニックによれば、
2010年における世界の自毛移植の施術数は、
- アメリカ 10万1,252人
- アジア 9万2,075人
- ヨーロッパ 3万3,194人
- 中東 2万3,136人
だったそうです。
日本皮膚科学会の「脱毛症治療ガイドライン」でも、
自毛移植の推奨度は ; B(勧められる)
になっています。
しかし、自毛移植では頭髪がある部分の頭髪を毛包ごと切り取り、ハゲた部分に移植するのが基本で、
頭髪を移動する
のです。
したがって、
- 頭髪の総数は増えない
- 毛包がなければ移植できない
という根本的な問題があるのです。
そもそも毛髪は、
頭髪の根元にある毛球部の中の毛母細胞によって作られます。
毛母細胞が細胞分裂を繰り返し、ケラチンを溜め込んだ細胞を産み出し、その細胞が毛包部で成長し、
最終的には死亡した細胞が髪の毛なのです。
したがって、頭髪は毛包がなければ生えてこないのです。
そこで、
新たに毛包を作りだして頭髪を再生しよう
というのが、
現在の頭髪の再生医療
なのです。
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資生堂グループの頭髪再生医療
現在、最も進んでいるのが資生堂を中心とする頭髪の再生医療です。
資生堂グループの頭髪再生医療は、
毛包の毛乳頭のすぐ下にある毛根鞘細胞に着目した毛髪再生医療の臨床研究を開始したことを発表しました。
臨床研究というのは、医者が中心と実際の患者で有効性を確認する試験です。
詳しく読む ⇒ 資生堂が頭髪再生医療の臨床試験を開始
毛包は、
- 毛母細胞と内毛根鞘細胞
- 毛乳頭細胞と毛根鞘細胞
という2つのグループで構成されているのですが、
毛根鞘細胞を移植すると毛乳頭細胞の移植よりも多くの発毛がある
ことが判明したからです。
カナダのベンチャー企業であるレプリセル社この研究成果に着目し、
欧州で毛根鞘細胞を用いてヒトにおける臨床試験をおこない、
19名中10名で毛髪密度が5%以上増加
したという成績を得たのですが、その後の開発は中断してしまったのです。
資生堂は2003年頃から毛髪再生医療の研究をおこなっていたのですが、
2013年に資生堂はレプリセル社と共同開発で提携し、この技術を引き継いだことによって資生堂の頭髪再生医療は一気に進んだのです。
さらに、
2014年に施行された「再生医療等の安全性の確保等に関する法律(再生医療新法)」により、
医師の臨床研究において、外部企業に細胞の製造委託が可能になり、頭髪の再生医療は一気に加速したのです。
詳しく読む ⇒ 再生医療新法により頭髪再生医療事業が加速化
2016年に開始した臨床研究では、
東京医科大学の坪井良治教授が責任者となり、
- 東京医科大学
- 東邦大学医療センター大橋病院
において
- 20歳以上の66人
を目標にした臨床研究が進められていま。
臨床試験で用いる毛根鞘細胞は資生堂が製造受託する分担になっています。
資生堂グループの頭髪再生医療は、既にお知らせしましたように、
- 患者の後頭部から毛包を含む直径数mmの頭皮を採取
- 神戸市にある資生堂の細胞培養加工施設で毛根鞘細胞を分離培養
- 毛根鞘細胞を約3ヵ月で約100万個に増殖
- 東京医科大学と東邦大学で患者の頭皮に注入
という流れなのです。
この臨床研究では、
1人の患者の脱毛部に複数の部位に濃度の異なる毛根鞘細胞の懸濁液や毛根鞘細胞を含まない溶液を注入し、安全性と有効性を検証しながら、
毛根鞘細胞の注入後1年間にわたって毛髪の太さと密度を調べ、
さらに2年間にわたって安全性を確認する予定だそうです。
臨床試験成績が出るのは2020年から2021年と思われます。
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理化学研究所の頭髪の再生医療
資生堂グループの頭髪再生医療は、
毛包を体外で増やして移植する
という方法ですが
理化学研究所が開発しているのは、
「毛包から作ってしまおう」という頭髪再生医療です。
理化学研究所の多細胞システム形成研究センターの辻孝チームリーダーらのグループは、
2007年に、試験管内で三次元的な細胞培養技術を開発しており、
この技術を用いて、
頭皮の真皮層から毛乳頭の元となる幹細胞など2種類の細胞を採取して培養し、
それらを組み合わせて三次元的な構造をした毛包を作り出して毛髪を再生しようとする再生医療なのです。
この方法では、
- 頭皮から毛包を採取
- 2種類の幹細胞を分離して培養
- 増殖した幹細胞で毛包の元を作る
- 毛包の元に細い糸を挿入
- 毛包を糸ごと移植
という手順だそうです。
まだ動物試験段階ですが、
マウスを用いた試験では、
1センチ四方で124本の毛が生えることを確認
しているそうです。
理化学研究所は2016年に京セラと共同研究で提携しており、オーガンテクノロジーズ、京セラと開発中です。
詳しく読む ⇒ 理研は京セラと共同開発を提携
臨床試験開始は2019年の予定ですが、期待が持てますね。
研究や基盤技術開発はり理化学研究所が主導し、
開発資金と特許管理は理理化学研究所の研ベンチャー企業のオーガンテクノロジーズが、
京セラは微細加工機器開発などを担当しています。
理化学研究所の辻チームリーダーは、
大きな課題は解決できた。
患者から100個の毛包を採取して10,000万個の毛包を作ることができれば、
1回の移植治療で薄毛の治療は完結し、移植後2~3ヵ月で発毛を実感できる。
との意気込みを語っているそうです。
頭髪の再生医療もかなりのスピードで進んでいるようです。
しかし、とりあえずの適用は病的な脱毛症でしょうから、AGAなどの薄毛への適応はもう少し先であることは間違いありません。
それまでは、
フィンジア、ビタブリッドC、あるいはヘアマックスなどで頑張っていきましょう。
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